文化資本は本当に教育成果をあげてるの? Kaggleのデータで分析してみた

今回使った書籍

以下の書籍(計量経済学の第一歩)を用いて分析の確認を行いました。参考文献、ベースにした理論の紹介をしたあとに実際に自分のした分析について紹介をしたいと思います。もし、間違いや分析手法のおかしさがあればぜひ教えていただければと思っています。

参考文献など

参考文献として、フランス人社会学者ピエール・ブルデューが書いた”The foms of capital”の教育について触れている項からインスピレーションをえました。また、Alice Sullivanという人の書いた論文、”Cultural Capital and Educational Attainment”という論文の解析手法を参考にさせていただきました。

文化資本が教育成果あげてるってマジ?

2000年代前半、フランス人社会学者のブルデューがThe forms of capitalという著作で3つの資本について提唱しました。経済資本、社会関係資本、文化資本。経済資本は簡単に言えばお金、いかに金銭的な富裕さを持っているか。社会関係資本はどれくらい人脈を持っているか。文化資本は細かく3つに分かれるのでそれについていかに説明します。

3つの文化資本

文化資本はEmbodied, institutionalized, objectifiedの三つに分類されます。邦訳すると「身体化された」「機関によって認められた」「客体化された」という意味になります。身体化されたとは、すなわちその人自身の振る舞いだったり持っている教養の深さのこと。話し方、食べ方、言語、勉強への姿勢、音楽や美術に対する知識や関心、などが例としてあげられます。例えば英語の重要性をわかっていたり、丁寧な話し方をするように注意をしたり、美術館に連れて行って興味を広げたり、勉強の重要性を自然と教えられたり、そういう親はかなり身体化された文化資本が高く、子供にも引き継がれる傾向にあります。次の「機関によって」というのは例えば学歴であったり、資格であったり、そういったものです。高い学歴を有して入れば周囲から見ると「この人は教養が深そうだな」とかの一つの指標になりますよね。「客体化された」というのはズバリものです。ピアノを持っていたり、絵画を家に飾っていたり、そういう物体自体に文化的な意味を持っているものが客体化された文化資本と呼ぶことができます。

3つの資本の相互関係

経済資本は全ての源になりえます。他二つの資本の重要性もいうまでもありませんが、経済資本があると何事もやりやすいわけです。例えば経済資本がたくさんあれば、高いご飯を食べに行けたり、パーティーを開くことも可能です。その際に、同じように裕福な人だったり、文化人だったりを招くことができます。こうして人脈を築いていけるという観点から、経済資本は社会関係資本に変わりえます。また、経済資本があれば絵画を購入したりもできます。こうして(客体化された)文化資本を手に入れることもできます。文化資本も経済資本と交換可能です。例えば、幼少期から英語をトレーニングしたり、海外で生活を積んでいたらその外国語を使って仕事ができます。ワインのテイスティングで、楽器を演奏することでお金と交換できます。また、社会関係資本も築きやすいです。同じ趣味を持つ人たちは仲良くなりやすいですからね。社会関係資本もどちらにも交換できます。人脈のおかげで仕事がえられたり、友人に楽器に詳しい人がいたから自分も楽器に詳しくなった、のようなことはありうるでしょう。

文化資本と教育

ブルデューは文化資本のうち特に身体化された文化資本が教育に及ぼす影響について語っています。家庭教育の段階から勉強に向かう姿勢、話し方などを体得している子供たちの方が、そうでない子供たちと比較した時に圧倒的に教育成果が違う現場を見たというわけです。ですが、ブルデューの著作では一つの仮説として「文化資本(特に身体化された文化資本)が高い学生ほど学校で成果を出しやすく、そうでない学生は出しにくい」ということを示したにすぎず、計量的な分析はされていないままでした。ブルデュー後、様々な学者が文化資本とその影響についての定量的な分析にチャレンジしています。今回はそのうちの一人である、Alice Sullivanの”Cultural capital and educational attainment”を参考にしました。この論文では文化資本の測り方として、親が子供とどういう関わりを持っているか、子供自身が文化資本をどれくらい有しているかを基準にしています。具体的には、「どのような本を読み聞かせてもらったのか」「テレビはどんなものを見るか」「どんな音楽を聞くか」「これまでどの程度文化的なイベントに参加したか」「文化的なものについての知識をどの程度持っているか」「言語試験の結果はどうか」というものでした。

kaggleのデータで分析する

いよいよ実際にデータを取ってきます(R studioを用いて分析しました)。kaggleのstudent academic performance datasetというデータをcsvファイルで取ってきました。1学期間を観測した、テストスコアの結果とその生徒にまつわる様々なデータが保存されています。今回僕は点数が高い(90点以上)を取った子供、よく発言をする子供、の要因を分析しようと試みました。様々なカラムがある中で着目したのが、「親がこのサーベイに協力してくれたかどうか」のデータです。調査に携わってくれるような親はある程度子供の教育に関心が高い可能性があると言っても良いのではないかと考えたからです。実際の分析結果がこちらです。

まずこれが点数が高いかどうか(高い=1)を被説明変数に、女性ダミー(女性=1)、手をよくあげる(連続変数、何回手をあげたか)、リソースをよく確認する(連続変数、何回確認したか)、親が調査に参加してくれた(参加=1)の四つを説明変数で重回帰分析を回したものです。一般化線形回帰分析もしてみましたが、結果はほぼ同じでした。また上述の参考書によると不偏性が担保されているのであれば被説明変数がダミーでも重回帰分析が使えるとのことでした。

さて、これによると女性であると12%, 手をあげる回数が一回増えるごとに0.4%, リソースの確認回数が一回増えるごとに0.2%, 親がサーベイに参加していると13.5%、高いスコアをとる確率が高まることがわかります。

上記分析をしている途中で、「手をあげるか否か」こそ学習態度を表しているのでは?と考え、別の分析を回してみました。これは手をあげる回数を被説明変数に、女性ダミー(女性=1)と親がサーベイに参加しているか(参加=1)を説明変数にしました。女性だと約9回、親がサーベイに参加していると約19回手をあげる回数が高くなっていることがわかりました。

まとめとコード

今回の分析は制限だらけでした。というのもやはり自分で獲得したデータでない場合、本当に欲しいデータがあるとは限らず解釈に解釈を重ねて分析せざるを得ないからです。しかし、文化資本、今回の場合は子供の文化資本というよりは親の文化資本(文脈的には親の学習参加の方がいいかもしれない)によって成績に変化が出たり、また、子供の学習態度自体に大きな影響を及ぼしているかもしれないという一つの仮説を得ることができました。絶賛卒論テーマを迷い中ですが、できたら文化資本関連について量で分析をしたいなあと思います。

書いたコードは

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする