香港の「ディープな街」深水埗(sham shui po)でフィールドワークをしてきた

香港とはどういう場所なのか

大学の人類学の授業の一貫で深水埗(sham shui po)という街でフィールド観察をしてきました。深水埗はガイドブックなどでは「ディープな街」として紹介されることが多いですが、どこがどうディープなのでしょうか。香港といえば様々なイメージがありますが、夜景の美しさや海沿いにそびえ立つ高層ビル、中環(Central)地区に集中する外資系金融機関などの資本主義のイメージが強いのではないでしょうか。そのイメージは正しく、この圧倒的なまでの資本主義的な考え方は社会保障政策のあり方にも大きな影響を及ぼしており、基本社会保障が全然充実しておらず弱者に対して厳しいのが香港社会です。

深水埗とはどういう場所なのか

中でも、深水埗は最貧層が暮らす地域としてよく知られています。こうした場所だからこそ、圧倒的なまでの資本主義社会の中で生き抜いてく貧困地域ならではの知恵をたくさん感じられるわけです。そこに観光客は香港の「ディープさ」を感じるのではないでしょうか。香港島にある中環などの香港の中心部とは全く異なった社会を垣間見ることができる反面、格差社会とは何かを突きつけられます。

鴨寮街(Apliu street)

今回、深水埗の中でも鴨寮街というストリートに主に着目してフィールド観察を行いました。鴨寮街は深水埗駅のexitAの目の前に位置しており、電気製品を売っているマーケットとして有名です(他のものももちろん扱っていますが)。新品も扱っていますが、中古製品の取り扱いの方が多く、価格もだいぶ安くなっていました。

鴨寮街で見た人々と特徴

鴨寮街で見た人々の特徴は主に二つあり、一つが若者が全くおらず、高齢者ばかりであること、もう一つが売り手の工夫でした。

この写真からも伺えるように高齢者だらけです。若者の姿を見ることはほとんどありません。

この写真の女性は、中古の電化製品の部品を一旦バラバラにし、分けた後で、部品を販売していました。

こちらの男性は、中古の製品をこのトラックで仕入れ、そのまま朝このストリートに来るとこのトラックの荷台で販売をし、一日の販売を終えるとそのまま帰っていきます。こうすることで、1枚目の写真にあるような露天の準備をする手間が省け、効率的に商売ができます。

深水埗の鴨寮街から読み取れること

先ほどの高齢者ばかりの様子と売り手の工夫は香港社会の社会保障の弱さ、弱者軽視の政策、これらと高齢化社会が結びついたことによるネガティブなインパクトを示しているのではないでしょうか。まず、香港でも日本と同様に65歳で定年退職をする必要がありますが、年金はわずかに2~3万円程度しかもらうことができません。

これは日本に共通する文化でもありますが、子供が老後親の面倒を見るべき、という考え方が中華文化の中心にあり、香港社会もその文化を継承していることが原因の一つでしょう。そのため、高齢者ほどお金に困っている傾向があるため、このストリートにも高齢者が集まりがちなのではないでしょうか。売り手はこうした金銭的に余裕がない高齢者の方ができる限り効率的に多くのお金を得るための工夫をする必要があります。これは買い手も同様で、若者はおしゃれな街に集まる一方、高齢者はより安い製品を求め、この街にやって来るのではないでしょうか。

香港は高齢者ー若者、の構図だけではなく、地域による格差もとても大きいです。そのため、「お前どこ出身?」という質問に対して、「香港島」と答えるのか「九龍」と答えるのか「新域」と答えるかによって、「お〜」となるのか「まじかよ〜!!」となるのかの違いが存在します。深水埗は九龍に属しますが、新域にも近く、冒頭に説明もしたように香港でも最貧層が暮らす街です。これだけ狭い地域なのにも関わらず、電車でわずか20分移動するだけで最貧層の街か、超裕福な人の街かが変わるわけです。今回のフィールドワークは世代間格差と地域格差、そして香港社会の社会保障の弱さを垣間見る良い機会となりました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする