志水宏吉「学校にできること 一人称の教育社会学」

志水宏吉とは

1959年、兵庫県生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了(教育学博士)。東京大学教育学部助教授を経て、大阪大学大学院人間科学研究科教授。1991~93年英国ウォーリック大学客員研究員。専門は、教育社会学、学校臨床学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(amazonより)

志水宏吉「学校にできること 一人称の教育社会学」の要約


本書は教育社会学者で大阪大学教授の志水宏吉先生がこれまでしてきた研究を一挙にまとめた本である。志水先生は教育社会学の中でもとりわけ、社会関係資本に詳しい方で、日本で社会関係資本について学ぶならまず志水先生の論文を読むべき、と言っても過言ではないくらいこの道のトップである。そもそもに戻るが、社会関係資本とはなんだろうか。

ソーシャル・キャピタル(Social capital、社会関係資本)は、社会学、政治学、経済学、経営学などにおいて用いられる概念。 人々の協調行動が活発化することにより社会の効率性を高めることができるという考え方のもとで、社会の信頼関係、規範、ネットワークといった社会組織の重要性を説く概念である。(wikipediaより)

誤解を恐れずざっくり言えば、つまりは人脈のことです。人脈形成が当人のその後の人生に与える影響を経済資本や文化資本と並列する重要な要素として捉えている。昨今、「学力の経済学」という本がきっかけになって始まった、教育の効果分析ブームがあるが、志水先生はその随分前から効果分析に取り組み、途中で効果分析だけを行う限界に気づいてエスノグラフィーという分析手法を用いて、学校現場で参与観察を行うことにした。ここでエスノグラフィーとは、

「エスノグラフィー」の画像検索結果gri.jp
エスノグラフィーとは、文化人類学や社会学、心理学で使われる研究手法の1つです。 もともとは、対象となる部族や民族の「文化」における特徴や日常的な行動様式を詳細に記述する方法のことを指します。(U-siteより)

こうすることで現場の制約を理解しながら研究を行い続けることができたようだ。先生の研究で最も面白いなと思ったのは、「繋がり格差」というものである。全国学力調査で成績が高い地方では地域間のコミュニティの繋がりが強いのに対して、繋がりが薄い(弱い社会関係資本)の地域では成績が下がる傾向が見られたのでした。さらに、踏み込んで面白いのが、「ではなぜ繋がりがつよそうな沖縄の成績が低く出ているのか」という調査だった。この答えは、学校や地域文化が子供に持って欲しいと期待する能力が勉強なのか、朗らかさなのか、肉体的な強さなのかという部分に起因する。沖縄では地元で明るく仲良くしっかり働ける強い子供を育てたいという思いが強いため、繋がりは強いが勉強にベクトルが向いていないということでした。

「学校にできること 一人称の教育社会学」を読んだまとめ

他にも興味深い研究がいくつもあったのでぜひ読んでみて欲しいです。繋がりの量と質を計測してそれが学力の格差を引き起こしている、という議論をしている研究者はあまり多くないので、とても刺激になりました。

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