コンビニ人間が描く社会不適合者の未来

村田沙耶香「コンビニ人間」とは

「コンビニ人間」は芥川賞を受賞した作品で、社会不適合のコンビニ勤務の女性が社会との接合にもがき苦しむ様を描いた真の現代小説である。

村田沙耶香とは

1979年千葉県生まれ。玉川大学文学部卒業。2003年「授乳」が第46回群像新人文学賞優秀作となりデビュー。09年『ギンイロノウタ』で第31回野間文芸新人賞受賞。13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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「コンビニ人間」あらすじ

36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。

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細かいあらすじ

実はこの本を読んだのは半年ほど前なのだがあまりにも印象が強すぎたので半年たった今でも読み返すことなくこの書評を書ける。それほどインパクトの強いものだった。主人公は小さい時からどこか一風変わったところがあって、みんなで可愛がっていた小鳥が死んだ時、周りの友人は泣いているのにも関わらず、自分だけはその鳥を鷲掴みにして母親たちの元へかけていき、「これを焼き鳥にしようよ」と言ったりしていた。また、それまで「普通」であることを求められてもそれが普通なのか、どれを基準にしたらいいのかわからない状態だった恵子にとって、全てをオペレーション化して刷り込みしてくれるコンビニのレジ打ちは生まれて初めて「普通」の基準を理解できる場所だったらしい。18年続けた中で知り合った奥様がたから少しづつ、20代女性の普通や30代女性の普通を学び、それを真似ることによって、社会不適合者の烙印を押されずに済むようになっていた。しかし、18年も経てば、正社員として働きもしない、結婚もしない女性を周りの目が許さず、徐々に普通じゃないことがバレていくような感覚を覚えるようになった。そんな時にコンビニバイトにどうしようもない白羽という男がやってきて、婚約を申し込んでくる。世間的な「普通」であるために、それを受け入れ、一旦はコンビニバイトをやめて他の会社の面接を受けたりするものの、18年かけて刷り込んだ恵子にとっての「普通」はコンビニバイトのレジ打ちで、それがなければいきていくことができないということに気づいた。白羽との婚約を破棄し、結局コンビニのレジ打ちを続ける、というところで物語は終わった。

普通を問うた小説

特に日本という社会で求められる暗黙的な右向け右のルールに溶け込めない人はいくらでもいると思う。この小説の主人公は一見、とんでもない社会不適合者なのだが、実はこうしたいくらでもいる人たちの特徴を少し強めに描いただけにすぎない。僕たちにはルールがあって、生まれて→学生→社会人→引退→死、の基本ルールに則らないと社会からのはみ出しものになってしまう。また、この中にも複雑な常識が眠っていて、浪人はいけない、大企業に入るべきだ、結婚は30までに、子供は二人はいないと、などなど。こういったレールに乗れない人間は元来社会不適合者として排除されてきたように思う。しかし、昨今あまりにもレールに乗れない人が増えてきた。これは当然の流れで、多様性などと言えばだんだん生き方、つまりレールの敷き方も個人によって異なってくる。当然経験が違えば価値観が変わる。価値観が変わるとレールが変化し、既存のレールだけでは対応ができなくなる。今の社会はこの既存のレールだけで対応が効かなくなってきてしまった世の中なのではないだろうか。主人公恵子はレールに乗れない姿を私たち見せることで「普通ってなによ」「多様ってなんなの」と問いかけているのかもしれない。

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