朝井リョウ「何者」から見たSNS時代の自己顕示

何者とsns~朝井リョウ「何者」とは

気鋭の作家、朝井リョウの「何者」。就活生を中心に若い世代の深層心理をえぐる小説としてヒットを記録している。昨年には映画化されたことでも話題になった。

何者とsns〜朝井リョウとは

1989年、岐阜県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞受賞。受賞作がベストセラーになり、現役大学生作家として注目される。男子チアリーディングチームを取材した書下ろし長編『チア男子!!』(第3回高校生が選ぶ天竜文学賞受賞)『星やどりの声』『もういちど生まれる』(2012年下半期直木賞候補)、『少女は卒業しない』などの小説を在学中に刊行。2012年春、大学を卒業して就職、大学時代の体験を綴ったエッセイ集『学生時代にやらなくてもいい20のこと』を刊行。2013年1月、『何者』で第148回直木賞を受賞。

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何者とsns~あらすじ

「あんた、本当は私のこと笑ってるんでしょ」就活の情報交換をきっかけに集まった、拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良。学生団体のリーダー、海外ボランティア、手作りの名刺……自分を生き抜くために必要なことは、何なのか。この世界を組み変える力は、どこから生まれ来るのか。影を宿しながら光に向いて進む、就活大学生の自意識をリアルにあぶりだす、書下ろし長編小説。

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何者とsns〜感想

著者の朝井さんが就職活動を経験しているだけあって、就職活動を通じて(もしくは就職活動をしないことを通じて)どの大学生も「何者」であるかを証明しようとウンウン唸っている様子が目に浮かんだ。人は悲しいもので誰かが成功している様子を見るとその影の部分を見つけたくなったりする。小説中、主人公拓人が光太郎の内定先について、「○○ 評判 2ちゃん」と調べていたり、意識高い系大学生理香が地に足つけて生きていくタイプの瑞月の内定先について、「○○ ブラック」と調べていたりする様子は誰でもやりかけてしまうものなのではないだろうか。そうして自分の矮小さに気づき自己嫌悪に陥り、さらに就職も決まらず、、、と負のスパイラルに陥っていく拓人や理香の様子が丁寧に描かれているのが印象的だった。また、主人公拓人は「昨年内定がもらえなかった」設定で今年もう一度就職活動に取り組んでおり、そうした中で、夢を追う系大学生を内心で見下し、twitterの裏アカで彼らの意識の気持ち悪さについて評論家風で書き連ねる様子もあった。これも、tweetはしないまでも多くの人が夢を追う系の人に対して抱くある一つの感情のような気はする。

何者とsns〜SNS時代の自己顕示

実はこの小説、就職活動というイベントを通して、若者の自己顕示や表現方法の変化を描いた作品のような気がしている。自戒も込めて言えることだが、昨今誰もが自分がsomeone(何者)だという自己顕示をしなければ快楽が満たされない世の中になってしまったような。しかもその何者であるかの自己顕示は決して結果を示して「私はこれをしました」というのではなく、大体の場合は「これをしている最中です」「これからやろうと思っています」「こんなことをなしとげまして、その過程で・・・」のように結果よりプロセス、多くの場合何もなし得ていないプロセスを半ばパフォーマンス用に脚色して自己顕示しているような感じになっている。僕自身、「期末レポート多い」「インターンの選考通った」「こんな論文を読んだ」だの誰も聞いていないのにまるで「僕は期末レポートを、インターンを、論文読みを頑張ってますよー!」と伝えるようにtweetしているのに気づいては、自分の投稿を消して呆れたりします。友達や恋人との写真をやたらSNSにあげるのもその一環で、例えば昨年インドネシアに留学していた時に、なぜ頻繁に写真をあげる必要があったのか。それはおそらく、「異国の地でこんなに友達できました」「楽しいです」という一種の自己顕示をしていたにすぎないのでしょう。

何者とsns〜まとめ

就職活動の面接などではいかに自分がsomeone(何者)であるかを示さなければいけないことが多いのは事実だと思います。ただ、現代社会においてそれは就職活動に限った話ではなく、SNSを通じて、自分がsomeoneであることを日々フォロワーという名の傍観者に示さなければ二本の足で立っていられなくなってしまった現代の若者の
生活そのものにも関わっているのかなと思います。こうして考える中で、少なくとも自分が何者であるかを意識するのをSNS上ではやめたいなと思うようになりました。とはいえブログなどという手段で「人と違う視点持ってます」的な自己顕示してんじゃないのおまえ、と言われたらそこまでな気がしますが。自戒を込めて。

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